
PROCESS
伝統の技と現代の知恵が、祭車をつくり上げる
一本の木が町の象徴へと姿を変えるまで、そこには、急ぐことなく、妥協することなく、丁寧に積み重ねてきた職人の工程があります。
祭車の誇りを支える制作の流れをご紹介します。
01
原木製材

大径木を、部材として使えるように丁寧に挽き割っていきます。
木目の流れ、年輪の詰まり、内部に潜むクセや割れの可能性を読み取り、どの部位に使うべきかを判断しながら、適切な厚みと寸法へと加工します。
この工程での判断が、後の強度・狂い・仕上がりの美しさを大きく左右するため、経験と技が問われる重要なプロセスです。
一本の木が祭車の一部として生きる準備を整えるまさにものづくりの土台となる工程です。
02
設計



だんじりや布団太鼓は町ごとに特色があり、同じものはひとつとしてありません。
設計ではまず、町の歴史や意匠、使われ方を踏まえたうえで、構造の強さ・美しさ・使い勝手のすべてが調和する形を描きます。
ここで方向を誤ると後の工程に影響を与えるため、経験と知識、「まつりを知る目」が求められます。
03
木の乾燥

木は伐られた瞬間から乾燥が始まり、内部の水分が抜けることで強さを発揮します。
しかし、乾燥を急がせれば割れや狂いが生まれ、長持ちする祭車にはなりません。
板谷工務店では、原木の性質に合わせて自然乾燥を中心に時間をかけ、木が落ち着くまでじっくりと寝かせます。
この工程こそ、100年以上使える強い祭車の土台になります。
04
彫り物(彫刻)






だんじりや布団太鼓の印象を決める大切な要素が「彫り物」です。
迫力のある龍や獅子、物語を描く場面など、町の想いを込めて彫り上げます。
板谷工務店では専門の彫刻師と連携し、木の性質や構造に合わせて最適な彫り物を提案します。
ただ美しいだけではなく、強度や重心も考慮した“生きる彫刻”を仕上げています。
05
組立



部材が揃ったら、いよいよ組み立ての工程に入ります。
台輪・枡組・柱・屋根など、ひとつひとつの仕口(しくち)を丁寧に刻み、木の特性を生かしながら組み上げていきます。
金具に頼らず、木と木を噛み合わせる“伝統構法”が強さの源です。
ここに大工の技量が最も現れ、長い年月に耐える祭車の骨格が生まれます。
06
完成



組み上がった祭車に飾り物や部品を備え、最終調整を施して完成となります。
その動き、揺れ、音、姿見――すべてが職人の答えです。
完成した瞬間はゴールではなく、町の宝として受け継がれていく始まり。
板谷工務店は、数百年先まで胸を張れる仕事を届けるために、細部に宿る誇りを大切にしています。